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​深いところで「会話」しているような

おぐりまさこ (俳優・脚本家・演出家 演劇ユニット 空宙空地 代表)

配信で演劇作品を観ると、どうしても途中で集中力が切れがちですが、この作品は最後まで二人の人物のやりとりに夢中になってました。
精密なやりとりが濃密な空間でされているのが画面から伝わってくる。
カメラワークと二人の俳優の演技力が相乗効果となって、映画を見ているようでした。

時折入る明さんのモノローグが、さらに空気を深めて引き締める。
その度に、観ているこちらも物語の中に深く沈み込んでいくような気持ちになりました。

特に印象的だったのが、二人の登場人物の人柄や心象。
俳優お二人の人柄からか、北の大地に暮らす人々の根っこにある情感なのか、登場人物二人それぞれが抱える苦しさや憎しみ、後悔といった、強い負の感情と同じくらいの、思いやりや慈しみが強く感じられるものでした。

作家の刈馬さんの別作品に出演させてもらったり、刈馬さんが作演出された作品を拝見すると、「懐疑心」や「駆け引き」という感情をベースに、相手を探り合う「対話」がいつも印象的なのですが、明さん飛世さんの演じる本作は、深いところで「会話」をしているような印象。相手の心情を知りたい。心に触れたい。そんな心の声が漏れ聞こえてくるようで、一緒に悩んで観てしまいまいた(笑)すっごい緻密に役づくりされたんだろうなあ。

脚本も、演出も、映像も、俳優さんも、とても素敵な作品でした。
次は生で観たいなあ!

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